「社内SEに興味はあるけど、実際どんな仕事をしているのかイメージが湧かない」——SIerやSESで働いている方、あるいは未経験からIT業界を目指す方から、こんな声をよく聞きます。
実は「社内SE」と一口に言っても、業務内容は職種によって大きく異なります。同じ社内SE募集の求人でも、情シスとインフラ担当と社内開発では、日々の仕事内容もキャリアパスも別物です。
この記事では、30名規模の企業で情シスとして3年間勤務し、様々な規模の会社の社内SE事情を見てきた筆者が、社内SEの仕事内容を3つの職種に分けて具体的に解説します。あわせて、職種別に求められるスキル、年収の目安、自分に合う職種の選び方まで、転職判断に必要な情報を網羅的にお伝えします。
読み終える頃には、「社内SEの3タイプの違い」「自分がどのタイプに向いているか」の理解が明確になっているはずです。
社内SEの職種は大きく3タイプ
まずは社内SEの全体像を掴むために、職種の3タイプを整理します。この分類を理解しておくと、求人票を見る時に「自分に合うか」の判断が格段に速くなります。
3タイプの全体像
社内SEは、業務の中心に応じて次の3タイプに分類されます。
- 情シス(情報システム部門): PC・アカウント管理、SaaS運用、ヘルプデスクなど、社員のIT環境全般を支える
- 社内インフラ担当: サーバー、ネットワーク、セキュリティ、クラウド基盤の設計・運用を担当
- 社内開発(内製開発)担当: 業務システムを自社で開発・改修する。近年はSaaS移行やローコード開発が主流
企業規模によって、この3タイプの分業体制が変わります。次で詳しく解説します。
企業規模で変わる職種の分担
大企業(従業員1,000名以上)では、情シス・インフラ・開発がそれぞれ別チームとして機能し、担当者は自分の領域を深く掘り下げます。
中堅企業(300〜1,000名)では、情シスとインフラを兼務、あるいはインフラと開発を兼務するなど、2タイプを1人が担当するケースが増えます。
中小企業(300名未満)では、情シス1〜2名で3タイプ全てを兼任する「一人情シス」体制が珍しくありません。筆者が勤めていた30名規模の会社もこのパターンで、実質2名で全業務を回していました。
求人を選ぶ時は、「情シスの人数」と「担当領域の範囲」を必ず確認してください。人数が少ないほど何でも屋になる可能性が高くなります。
情シス(情報システム部門)の仕事内容
情シスは「社員のIT環境全般を支える」役割で、社内SEの中では最も業務範囲が広い職種です。ここでは具体的な業務内容と、1日の流れを紹介します。
主な業務内容
- PC・スマートフォンのキッティングと配布
- 入退社に伴うアカウント発行・削除
- SaaS(Microsoft 365、Slack、Google Workspace、freee等)の管理・契約更新
- ヘルプデスク対応(PC故障、パスワードリセット、Zoomトラブル等)
- 業務改善のためのITツール選定とベンダー折衝
- 情報セキュリティルールの策定と社員教育
- IT資産管理・ライセンス棚卸し
- 社内システムの企画・導入プロジェクト管理
情シスの1日の流れ(筆者の実体験)
筆者が情シス時代に過ごしていた1日の典型例を紹介します。
- 9:00 メール・Slackチェック、夜間の障害通知確認
- 9:30 新入社員のPCキッティング(月初は特に多い)
- 10:30 ヘルプデスク対応(「プリンタが動きません」)
- 11:00 経理部門とkintone業務フロー改修の打ち合わせ
- 12:00 昼休み
- 13:00 SaaSベンダーとオンライン商談
- 14:30 セキュリティ設定の見直し作業
- 15:30 別部門から「新しいツール導入したい」の相談対応
- 16:00 稟議書作成(新規SaaS導入の予算申請)
- 17:30 明日の作業準備、メール返信
見て分かる通り、深く一つのことに集中する時間より、細かい対応や打ち合わせが1日中続くのが情シスの特徴です。マルチタスクが苦手な方には向きません。
情シスの向き不向き
情シスに向いているのは、幅広い業務を「浅く広く」こなせる方、コミュニケーションが得意な方、業務改善提案が好きな方です。
逆に、一つの技術を深く極めたい方、コードを書き続けたい方、ヘルプデスク対応が苦痛な方には不向きです。
社内インフラ担当の仕事内容
社内インフラ担当は、サーバー・ネットワーク・セキュリティ・クラウド基盤といった「IT基盤の設計・運用」を担当する職種です。情シスに比べて技術専門性が高く、深く狭く働くタイプです。
主な業務内容
- 社内ネットワーク(LAN/WAN/VPN)の設計・運用
- ファイアウォール・スイッチ・ルーターの設定・保守
- サーバー(オンプレ/クラウド)の構築・運用
- クラウド基盤(AWS、Azure、Google Cloud)の設計・移行
- セキュリティ対策(EDR、SASE、ゼロトラスト等)の導入・運用
- バックアップ・災害対策(DR)の設計・実施
- ID管理(Active Directory、Okta等)の運用
- 監視ツール(Datadog、Zabbix等)による障害検知・対応
情シスとの違い
情シスが「社員の困りごとに対応する」役割なのに対し、インフラ担当は「システムが動き続ける基盤を守る」役割です。
ヘルプデスク対応は少なく、代わりに障害対応やシステム更改プロジェクトが中心になります。ネットワーク機器のファームウェア更新、大規模なクラウド移行、セキュリティインシデント対応など、深い技術知識が求められる場面が多い職種です。
インフラ担当の向き不向き
インフラ担当に向いているのは、ネットワークやサーバーに深い興味を持つ方、障害対応で冷静に判断できる方、コツコツと安定運用に取り組める方です。
逆に、業務改善やコミュニケーションが得意な方、コードを書きたい方には物足りない可能性があります。SIerのインフラ部門経験者、ITベンダーのSE経験者には特に向いています。
社内開発(内製開発)の仕事内容
社内開発担当は、自社で業務システムを開発・改修する職種です。近年はSaaS導入やローコード開発が主流になり、フルスクラッチ開発を行う企業は減少傾向ですが、事業会社の内製化ニーズは拡大しています。
主な業務内容
- 基幹システム(ERP、CRM、SFA等)のカスタマイズ・機能追加
- 業務システムの新規開発(社内向けWebアプリ、モバイルアプリ)
- SaaS間連携の実装(iPaaS、Zapier、API連携)
- ローコード/ノーコードツール(Power Platform、kintone、Bubble等)の構築
- データ基盤(DWH、BI)の構築・運用
- 要件定義(業務部門から要望をヒアリング)
- ベンダー管理(外部開発会社への発注・進捗管理)
SIerの開発との違い
SIerでは「顧客の要件を実装する」立場ですが、社内開発は「自社の業務を自分で設計する」立場です。要件定義から自分で進めるため、業務理解が深く求められます。
また、外部ベンダーへの発注も業務の一部になります。「全てを自分で作る」のではなく、「自社で作るか、外注するか」を判断し、外注する場合は要件を伝えて品質管理する役割も担います。
社内開発担当の向き不向き
社内開発担当に向いているのは、コードを書きながらも業務理解を深めたい方、事業側と密に連携したい方、ベンダーマネジメントもできる方です。
逆に、純粋な技術力だけを追求したい方、業務ヒアリングが苦手な方には、SIerの開発案件やWeb系企業のプロダクト開発職の方が向いています。
職種別に求められるスキルと経験
3タイプそれぞれで求められるスキルと年収の目安を整理します。転職活動時に「自分の経験がどう活かせるか」の判断材料にしてください。
情シスに求められるスキル
- 主要SaaS(Microsoft 365、Google Workspace等)の管理経験
- ITIL(サービスマネジメント)の基本知識
- 業務ヒアリング・要件整理力
- ベンダーマネジメント経験
- 非エンジニアへの説明スキル
- プロジェクト管理経験(システム導入等)
年収の目安は400〜700万円(中小〜中堅企業)、大企業や外資系では800万円以上も可能です。
インフラ担当に求められるスキル
- ネットワーク基礎(TCP/IP、ルーティング、CCNA相当)
- Windows Server/Linuxの運用経験
- クラウド(AWS、Azure、GCP)の実務経験
- セキュリティ対策の知識(EDR、SASE、ゼロトラスト等)
- ID管理・認証基盤の運用経験
- 障害対応・トラブルシューティング力
年収の目安は500〜800万円、大企業や外資系のクラウドアーキテクトポジションでは1,000万円以上も可能です。
社内開発担当に求められるスキル
- プログラミング言語(Python、Java、JavaScript、C#等)
- Webアプリ開発フレームワーク経験
- データベース設計・SQL
- API設計・SaaS連携経験
- ローコード/ノーコード(Power Platform、kintone等)
- 要件定義・業務分析力
年収の目安は500〜800万円、DX推進部門やデータエンジニア職では900万円以上も可能です。
SIer出身者はどのタイプに向いているか
SIer出身者は、経験してきた領域によって向くタイプが変わります。インフラ設計・運用経験があればインフラ担当、業務系システム開発経験があれば社内開発、幅広く案件をこなしてきたなら情シス、というのが自然な流れです。
詳しくは「SIerから社内SEへ転職したい人向け完全ガイド|失敗しない進め方」で、SIer経験の活かし方と失敗パターンを解説しています。
自分に合う職種の選び方
3タイプの違いが分かったところで、自分に合うタイプの選び方を整理します。以下の3ステップで判断してください。
ステップ1: 自分の適性を客観視する
まずは社内SE全体としての適性を確認してください。「社内SEに向いている人の特徴7つ|適性チェックリスト付き」の20項目セルフチェックで、自分の適性を客観視できます。
逆に「向いていない特徴」に該当する場合は無理に社内SEを目指すべきではありません。「社内SEに向いていない人の特徴6つ|転職前に確認したいポイント」で不適合パターンも確認しておくと判断精度が上がります。
ステップ2: 業務スタイルの好みを整理する
次に、業務スタイルの好みで3タイプを絞り込みます。
- 幅広い業務を浅く広く+コミュ重視 → 情シス
- 深い技術専門性+安定運用重視 → インフラ担当
- コードを書く+業務理解も深めたい → 社内開発担当
「複数のタイプに興味がある」場合、中堅企業や中小企業の兼務ポジションを選ぶと、複数領域を経験できます。ただし業務負荷は高くなります。
ステップ3: 企業規模で絞り込む
最後に企業規模で絞り込みます。
- 大企業(1,000名以上): 職種が明確に分業、専門性を深められる、年収も高め
- 中堅企業(300〜1,000名): 2タイプの兼務、バランス型のキャリア
- 中小企業(300名未満): 全業務を兼任、幅広く経験できる反面、負荷は高い
「専門性を深めたい」なら大企業、「幅広く経験したい」なら中小企業、「バランス重視」なら中堅企業が向いています。
また、「社内SE やめとけ」というネガティブ論も気になる方は、「社内SEはやめとけと言われる7つの理由|経験者が実態を検証」も参考にしてください。7つの理由を検証し、後悔しない求人選びの条件も解説しています。
まとめ
社内SEは、情シス・インフラ担当・社内開発担当の3タイプに大きく分類できます。企業規模によって分業体制が変わり、大企業では専門性を深く、中小企業では全業務を兼任するのが一般的です。
3タイプそれぞれで求められるスキルも年収も異なります。自分の経験・志向に合ったタイプを選ぶことで、転職後のミスマッチを大きく減らせます。
職種選びのステップとしては、①社内SE全体の適性を確認、②業務スタイルの好みで3タイプを絞る、③企業規模で絞り込む、の順で進めるのが最も効率的です。
次のアクションとして、まずは「社内SEに向いている人の特徴7つ|適性チェックリスト付き」の20項目セルフチェックで自分の適性を確認してください。あわせて、SIer出身の方は「SIerから社内SEへ転職したい人向け完全ガイド」、ネガティブ論が気になる方は「社内SEはやめとけと言われる7つの理由」も参考になります。
社内SEは、「自分に合うタイプ・自分に合う会社」を選べば、SIerやSESでは得られない充実感のある働き方ができる職種です。この記事の3タイプ分類を、あなたの職種選びの参考にしてください。

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